ボーイスカウト日本連盟のコロナ禍における新しい挑戦

AJA製品とともにリアル&オンラインのハイブリッドイベントを開催

キッザニア東京にて、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟が「全国こども体験フォーラム2021」をライブ配信で開催!

オンラインの利便性を活かし、新しい生活様式の中でも持続可能な新しいカタチのイベント実現を目指したプロジェクト。プロ仕様の映像機器を使用し、これまでとは違ったイベントに挑戦しました。

導入先

公益財団法人ボーイスカウト日本連盟では野外でのグループ活動を通じ、子どもたちの自発性や自主性、協調性、社会性、たくましさ、あるいはリーダーシップなどを育む活動を実施。各年代に合わせてバラエティに富んだ活動プログラムを組んでいる。ボーイスカウトは、1907 年に青少年教育活動としてイギリスで始まったもの。今では世界 171 の国と地域で約 5,400 万人が参加しており、日本でも「団」と呼ばれる約 2,000 の活動母体で 9 万人ほどが活動している。同連盟の具体的な活動と目的は、例えば以下の通りだ。

  • 小グループ活動 (班制教育)
    • 異なる年齢の子どもたち 6~7 人を集めた自治グループで指導力と責任感を養成する
  • 野外活動
    • 大自然の中で身体を鍛え、技能を磨き、知識と強い意志を身につける

例年は特別野営イベントをはじめ、全国的に行われるスカウト運動のキャンプ大会「ジャンボリー」を開催してきた。しかし、2020 年以降は新型コロナウイルスの感染拡大により、同連盟の活動やイベントも制限される状況となっている。

安全を確保しつつ、子どもたちが関わる “体験活動 “の重要性を発信し続けること。そのために、ボーイスカウト日本連盟は文部科学省 令和 2 年度「体験活動等を通じた青少年自立支援プロジェクト」委託事業として「全国こども体験フォーラム2021」の開催を決定した。

本フォーラムは、職業体験を通して子どもが社会の仕組みを学ぶ場を提供している職業体験施設「キッザニア東京 (東京都江東区豊洲)」を開催会場として、同施設内の劇場に足を運ぶオフラインでの参加と、オンライン参加を交えたハイブリッド開催が決定。そして、オンラインと会場の同時開催に向けて組まれた撮影・配信・収録システムには、AJA 社のライブイベント向け製品が多数採用された。

当初の課題

ボーイスカウト日本連盟は感染対策として、キッザニア東京の会場に集まるスタッフ・出演者の人数を制限。また、これと共にイベントの開催風景を配信するだけでなく、オンラインの特徴を活かした新しい演出方法に挑みたいと考えていた。

会場の参加者に向けたオフライン開催では、司会者やゲストスピーカーがキッザニア東京の劇場ステージに登壇。オンラインの企画では全国各地の「団」が活動する数カ所の拠点と中継を繋いで団員にもフォーラムに出演してもらい、ゲストスピーカーもビデオ会議システムでリモート出演することが決まった。

さらに、来場者だけでなくインターネット配信の視聴者も質疑応答できる参加型イベントとしての演出も。その中では開催会場の登壇者とオンライン参加の出演者や視聴者が、スムーズかつリアルタイムに連携できる配信ワークフローを組む必要があった。

システム構成

当日は劇場の 1 階部分がオフラインの開催会場となり、動画配信・収録チームのシステムは 2 階席に組まれた。出演者が登壇するステージは 1 階の観客席後方に設置した 3 台のカメラで同時撮影。その映像は NewTek 社のライブ映像制作・配信システム「TriCaster TC1」に送られた。

なお、TriCaster TC1 にはメイン会場だけでなくリモート出演者の映像やプレゼンテーション資料、その他に配信で使う映像素材がすべて入力され、合成ツールによって配信画面のレイアウトを作成。以下のような一連の映像演出を一括操作できるシステムが組まれている。

  • 配信する映像の切り替え
  • 出演者名の名前をテロップ表示
  • ゲストから送られたメッセージ動画の再生 など

各地の「団」が活動する拠点からの中継、あるいはゲストスピーカーのリモート出演には、放送品質でビデオ通話できる Microsoft 社のソフトウェア「Skype TX」を使用。Skype TX からの映像は LAN ケーブルで映像を送る NDI 経由で TriCaster TC1 に入力され、出演者の映像とプレゼンテーションのスライド画面を切り替えながら子どもたちの “体験活動” の重要性について話す演出が採用された。

また、オンライン開催では YouTube とビデオ会議システム Zoom での同時配信が決まり、参加者はどちらのプラットフォームからでも視聴できるワークフローが組まれた。

AJA 製品でライブ配信ワークフローを効率化

H.264 配信 : HELO

配信機材には AJA 社の「H.264 収録 / 配信デバイス HELO」を導入。TriCaster TC1 のプログラムアウトを HELO でエンコードし、YouTube に配信した。

HELO は業務用放送機器メーカー AJA 社ならではの技術力と汎用性を兼ね備えた製品。民生カメラから放送用の映像機器まで、あらゆる設備環境で安定した配信を実現する。映像の記録には SD カードや USB メモリ・ストレージ、あるいは NAS (ネットワーク接続ストレージ) 機器が対応し、H.264 での配信と同時に最大 12 時間の録画が可能な長時間のイベントでも利用できる仕様だ。

さらに、SNS プラットフォーム (YouTube Live、Facebook Live など) から企業向けの配信プラットフォームまで任意の CDN (コンテンツ配信ネットワーク) へ配信したり、ストリーミングソフトウェア(Wirecast や vMix、OBS、Wowza など) と組み合わせてプロレベルの放送へと用途を広げたりすることもできる。

また、最大 1080p 60 の高品質な H.264 エンコードが可能で、1 台のデバイスで 3G-SDI と HDMI どちらのビデオ信号の入力にも対応。HDMI だけではなく SDI 入出力も搭載しているため、プロ品質の動画配信を手軽に実現できるのが HELO の特徴だ。

キャプチャー : U-TAP

HELOとは別系統で TriCaster TC1 のプログラムアウトを 「U-TAP」からでパソコンに入力し、Zoom で視聴している参加者にもオンライン配信中のライブ映像を届けていた。

U-TAP はカメラやビデオ機器から映像をパソコンに読み込む際に活用できるビデオキャプチャーデバイス。USB 3.0 で U-TAP をパソコンに接続すれば、カメラからのビデオ信号 (SDI / HDMI) をウェブカメラの映像としてパソコンに入力できる。撮影や配信に慣れていなくても USB 接続で簡単に使用できるため、プロフェッショナルの現場から一般的な利用まで幅広く導入できる AJA の人気製品だ。

H.264 収録 : Ki Pro GO

映像収録でも AJA 製品が活躍している。 カメラ 3 台と TriCaster TC1 からのプログラムアウトという合計 4 つの映像は、AJA のマルチチャンネル「H.264 レコーダー Ki Pro GO」に記録された。これは配信後に素材の共有や編集が必要になった場合でも、すぐに対応できる体制である。

Ki Pro GO は最大 4 チャンネルの HD や SD ビデオを、同時に市販の USB ドライブへチャンネル毎にファイル分けして記録可能だ。そのため、イベント終了後の編集用途としても活用できる。コンパクトなサイズは持ち運びやすく、今回のようにスペースの限られた現場でも適した設計だ。

音声は 2 チャンネルのエンベデッドオーディオ、またはバランスド XLR アナログオーディオに対応。マルチチャンネルマトリックス (4 分割) モニタリング機能によって最大 4 チャンネルのビデオ入力を、 1 台の HDMI モニターあるいは SDI モニター上で確認できる。

また、HDMI および SDI モニター出力へのスーパーアウト機能が強化され、タイムコードやメディア残量ステータス、各チャンネルのオーディオメーターの表示も可能だ。そのため、映像を記録しながら収録状況の把握も求められるライブ配信現場に最適な製品である。

その他

パソコンからの HDMI 出力を SDI に変換し、サイズ調整して出力できる AJA のスキャンコンバーター「ROI-HDMI」も使用。プレゼンテーションや Zoom のウィンドウなど、パソコン画面から必要な部分だけを抽出して SDI ビデオ出力できるため、TriCaster TC 1 にパソコン画面をビデオソースとして入力することができた。

また、会場ステージに登壇していた出演者用に 2 台の映像返しモニターを設置。その手前には、さまざまな種類のビデオフォーマットの変換とフレーム同期が可能な「FS-Mini」が使用された。

導入結果

2021 年 2 月 21 日に開催された「全国こども体験フォーラム2021」には、来場者と Zoom / YouTube によるライブ配信の視聴者を含めて約 500 人が参加。当日は Zoom と YouTube のチャット・コメント機能を利用し、オンライン視聴者もリアルタイムで質疑応答に参加できた。

配信用素材の切り替えを効率化

以下のような配信用の素材は、すべて「NewTek TriCaster TC1」で集める形に。プロの現場と同様のシステム設計となり、放送番組のようにスムーズかつ効率的な映像素材の切り替えを可能にした。

  • 劇場ステージを撮影するカメラからの映像
  • リモート出演者の映像
  • 全国各地の「団」からの中継映像
  • プレゼンテーション、テロップ など

万が一の予備配信対策も万全

「AJA HELO」はライブ映像をエンコードし、安定したオンライン配信のワークフローを実現。同時に、U-TAP によって Zoom 参加者向けにもライブ映像を届けるとともに、パソコン上のビデオ配信ソフトウェア「Wirecast」でも配信できる体制だった。そのため、もし HELO 経由のメイン配信が落ちてしまった場合にはバックアップ映像としても応用でき、予備の配信映像も備えた配信環境を整えていた。

イベント終了後すぐに映像や素材を取得

収録システムに取り入れた「AJA Ki Pro Go」で、カメラ 3 台の映像と配信映像を、H.264 ファイルで個別かつリアルタイムに USB ドライブへ記録。これによってボーイスカウト日本連盟はイベント終了後、すぐにアーカイブ用の映像と編集用のカメラ素材を受け取ることができた。

今回組まれたライブ配信ワークフローは、会場の登壇者とリモート出演者のスムーズな連携を可能にするものだ。その結果、オンラインとオフラインの同時開催という、ボーイスカウト日本連盟にとって新しい形のイベント開催を実現した。

同連盟は主に野外での活動を中心に企画しているが、新型コロナウイルスの影響を受けてオンラインの活用にも取り組み始めている。今回のハイブリッドイベントの開催経験は、今後の活動にも応用が期待できる実績となるだろう。

「全国こども体験フォーラム2021」開催の様子は、ボーイスカウト日本連盟の公式 YouTube チャンネルにて、見逃し配信を公開している。(2021 年 6 月 30 日まで視聴可能)

視聴はこちら : https://youtu.be/du-V1CB2P7c

取材先・参考

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