今年で設立2年になる大阪市中央区にある株式会社SpEEDは(http://www.speed-tv.jp/ )、番組制作をメインにDVD制作やCM、イベント映像、ITコンテンツなど映像全般の編集を手がける編集プロダクションだ。代表取締役でもあるエディターの中澤 丈氏は、編集歴18年のうちノンリニア編集を15年経験しており、リニア編集の時代も経験したエディターである。エディターとして豊富な編集経験をもつ中澤氏が構築した編集システムとはどのようなシステムなのだろうか。
効率のよいテロップシステムを構築するために
各編集室にKONA 3を2式導入
「会社を設立当初どのようなシステムを構築するか、いくつかの製品を検討しましたが、信頼性やコストパフォーマンスなどからAJA KONA 3とApple Final Cut Pro (以下FCP)によるシステムを導入しました。各編集室にはKONA 3システムが2式あり、1つをテロップ専用機、もう1つを編集専用機にしています。
導入当時、テロップはFill+Keyが出るということで、Adobe Photoshopで作ったものをMotionにもっていき、コマンドを使うと出力されるというプログラムをApple Scriptを使って構築していました。その後検討を重ね、KONA TVで1枚書き出せばFill+Keyが出ることを利用して、Photoshopでファイルを作って、そのファイルをKONA TVを開いて出力していたのですが、一連の作業を行うのに5秒ほどはかかるシステムでした。OS XでFill+Keyを出力させるにはこれしか手がなかったんです。」
中澤 丈氏 (株) SpEED 代表取締役(写真手前)、能宮 幸恵さん(写真奥)
編集室には2式のKONA 3システムがあり、それぞれをFCP編集機、テロップ専用機として運用している。
テロップ作成用のタイトルソフトは、編集ソフトに付属のものから単体の専用ソフトまで様々な種類があるのになぜPhotoshopを使うのか。各人各様だが、一般的にクライアント支給のロゴデータなどがPhotoshopで作成されていたり、デザイナーへメインタイトルなどを発注した場合もPhotoshopで作られたデータであることが多い。また、デジタルカメラで撮影したデータなど様々なファイルをハンドリングでき、タイトル用のソフトを扱えるデザイナーも少ないことからPhotoshopはタイトル制作用の重要なツールになっていた。ところが、OS X環境になってから、Fill+Key出力に対応するボードがなくなってしまっていた。中澤氏だけでなくPhotoshopをタイトル制作に使っていたユーザはこの時期みな同様の問題に遭遇していたはずだ。
2008年の秋にMac Plug-ins for Adobe v6.0がAJAからリリースされ、KONAユーザーはこうした問題から開放された。Mac Plug-ins for AdobeではPhotoshop向けに、KONAを使用したCapture、Previewの両機能を提供している。AJA Image Captureは、設定画面を表示することなく、KONA 3ボードに入力されている映像からリアルタイムに静止画を生成することができるもので、テロップをのせる下絵を編集ソフトを使わずにキャプチャーすることが可能だ。また、AJA Previewは、Photoshop上で開いているファイルをKONA 3から映像信号として出力するもので、いちど設定してしまえば、ファイルメニューの「書き出し」からAJA Previewを選択することで、すぐにKONA 3から映像出力を得る事ができる。さらに、Photoshop上で表示がONになっているレイヤーのみを出力することが可能なほか、Fill+Key出力もサポートしている。
(Mac Plug-ins for AdobeはKONAユーザーに無償提供中)
Mac Plug-insでテロップ制作を加速
「Mac Plug-insの登場で格段に効率がアップしました。編集用マシンからの出力を常にテロップシステムのKONA 3に入力しているので、テロップを挿入したいクリップをすぐに取り込めるんです。こうして取り込んだ下絵をテロップシステムのPhotoshopで位置合わせや色設定などを行って完成させ、編集用のマシンでテロップを載せます。」
下絵用の画像をFCPで書き出すには、1フレームを書き出し・保存しなくてはならないが、Mac Plug-ins for Adobeをインストールしておけば、ファンクションキーを押すだけで書き出しまでやってくれる。SpEEDの編集室にはスイッチャーが導入されており、これは、テロップ用マシンと編集用マシンからの出力を合成し、位置や色などをディレクターに確認してもらうためのものだ。
また、編集作業はテロップ制作と映像編集の2人体制になっており、作業が同時進行できるようになっている。まさに社名(SpEED)のとおりスピードを追求したユニークなシステムとワークフローだ。
【SpEED構築システム 映像信号の流れ】
(クリックして拡大表示)
フォーマットを選ばないKONA 3
「局納品の場合はHDCAM。DVDはデジベ(SD)。VPはDVCAM。さらに、Web用データやMA用ワークテープ(ファイル)などそれぞれに適したフォーマットで出力しなくてはなりません。そこでKONA 3が役立つんですよ。」
ノンリニア編集が普及し、複数のVTRやスイッチャー、編集機、DVEといった巨大戦艦的な設備から開放されたかに見えたが、素材をキャプチャするためのVTRや完パケテープを記録するためのVTRなど、フォーマットが乱立する昨今ではポストプロダクションの悩みは尽きない。インチやD2が全盛期だった時代は、物量こそ大変なものだったが、ビデオ信号はコンポジットかSDIに統一されており、信号系は実にシンプルであった。
一方、現在ではHD/SDだけでなく、VTRのフォーマットにより信号系も複雑になり、ファイルベースでのやりとりも一般化しつつある。様々なフォーマットに対応できることはもはや必須条件といえるだろう。KONA 3はHD/SD、デジタル/アナログ入出力だけでなく、放送品質に耐えうるアップダウンコンバーターを搭載しており、こうした要求に応えている。
中澤氏自らがプロデュースした編集室。編集機や周辺機器がコンパクトかつ整然に配置されている。
ファイルベースでやり取りを行うことで 制作時間の短縮や作業の効率化を計る
「ディレクターがFCPをインストールしたラップトップで仮編集まで終わらせることが多くなってきました。以前はキャラ入りのオフラインテープやEDLデータで仮編集データのやり取りを行っていましたが、仮編と同じFCPで本編の編集も行うことで、仮編の尺を延ばす方向の手直しも瞬時に可能です。また完成したものをVHS・DVDにコピーすることなく持ち込まれたHDDに返すことでディレクターは自分のラップトップでナレーション原稿作成など次の作業へすぐに移ることができます。」
SpEEDでは高速のテロップシステムを実現しているだけでなく、ファイル化できるものは極力データ化してやり取りを行うことで、さらに制作時間の短縮や作業の効率化を計っている。たとえばMA作業を東京で行う際に、MA用のデータはインターネットを介して送り、輸送にかかる時間もコストも削減している。
同様に、最近制作を行っている番組プロデューサーともテープレス且つネットを介してやり取りを行っており、チェック後すぐに手直しをする体制でスピーディな制作を展開しているという。
編集作業だけでなく、編集から完パケまでに携わる制作者との連携に至るまで、ノンリニアならではの利点を最大限に生かした流れを、見事に実現し運用している。
今後、SpEEDの中澤氏が思い描く「Special Electronic Editing」はどのような変化を遂げていくのだろうか。
※この事例は「ビデオα 5月号」 (2009年4月発売号) でもご紹介されています。あわせてご覧下さい。