| 東映は、2009年2月からのテレビ戦隊シリーズ『侍戦隊シンケンジャー』でRED ONE収録によるフルデジタル制作へと移行。2009年夏の映画『侍戦隊シンケンジャー 銀幕板 天下分け目の戦』ではステレオスコピック3D(S3D)作品として公開した。この作品の成功を受け、2010年夏は、戦隊シリーズだけでなく仮面ライダーシリーズもS3D作品として公開することを決定した。 2010年4月後半から5月末にかけて行われた撮影では、『仮面ライダーW』と『天装戦隊ゴセイジャー』の2チームが同時進行。1チームあたり、1台のエレメントテクニカ製3Dリグに2台のRED ONE、2D収録用に2台のRED ONEというカメラ4台構成。2チームで合計8台のRED ONEが活用された。S3D作品として成立させるためには、左右の眼の視野に応じた映像を録るために、2台のカメラを3Dリグと呼ばれる架台に乗せて視差のある映像を撮影する必要がある。一口に視差のある映像といっても、視野内の物体を見つめる視点、つまり左右の視線が交差する位置(コンバージェンスポイント)を設定する視差調整を、カットごとに行いながら収録する必要があり、これがS3D作品の肝となる。 RED ONEによるS3D収録とプレビュー環境に使用したQTAKE HD 撮影時に必要な視差調整を現場で効率的にプレビューするために、アップルのMac Proデスクトップ環境にAJA KONA 3を2枚挿入したIn2Core製QTAKE HDを導入。QTAKE HDは、1枚のKONA3で2台のRED ONEプレビュー出力を2系統同時入力し、もう1枚のKONA 3でS3D表示用に2系統出力している。 QTAKE HDの導入にも関わった東映 デジタルセンター小林真吾氏は、S3Dスーパーバイザーとして今回の撮影に参加した。小林氏は、監督とカメラマンをサポートし、そのシーンのS3D撮影がS3D表現として適切かどうかを判断する立場になる。今回の収録では、S3D収録の視野と奥行き感を確認する視差調整プレビューに特化して使用した。2台のRED ONEの720p出力をHD-SDI経由でQTAKE HDに入力し、QTAKE HDで左右の映像を組み合わせて24型3D対応フルHDモニタに出力するとともに、左右の映像をミックスしたものをカメラに取り付けた2Dモニターで見れるようにしている。 視差調整中のQTAKE HDシステム |
東映はS3Dチャートを自作。こうしたパネルをコンバージェンスポイントに配置することで視差確認がしやすくなり、視差調整にかかる時間も大幅に減らせる。コンバージェンスポイントの位置に応じて、大小のチャートを使い分けた。写真右から、監督 坂本 浩一氏/東映カメラマン 倉田 幸治氏/東映デジタルセンター S3Dスーパーバイザー 小林 真吾氏/東映テレビ・プロダクション 八木 明広氏 「今回のS3D収録で、QTAKE HDがなかったら、この短期間では収録が終わらなかったでしょうね。スイッチャーでは、収録後にパッとプレビューするということはできません。QTAKE HDは視差調整用のモニターとして、さらに収録時には軽いコーデックを使用してディスク収録して収録後のプレビューとして使用しました。今回はモニターや プレビューがいかにスムースに行うことができるかに集中して使用しました。QTAKE HDで見ている映像がファインダーとイコールなのか、S3Dの仕上がりに対してイコールなのかという部分が重要でした。QTAKE HDで調整して、より綺麗にプレビューすることも可能ですが、ミラーリグやカメラ側で調整すべきことを補正してしまい、問題を切り分けることが難しくなり ます。そこで、QTAKE HDの調整機能はあっても使用しないと決めていました。QTAKE HD本来のポテンシャルは別のところにありますが、収録現場で信頼をおいて運用できる機材でした。撮影期間中は、QTAKE HDに起因するようなトラブルはなく運用できました」(小林氏) 今回は、ARRIVISIONを使用して、RED ONEの4Kパネルを使用して1台でS3D収録することも10カット程度行った。ARRIVISIONは2眼式レンズシステムを採用したS3D収録用特殊 レンズで、1フレームに左右の映像を同時に記録できる。今回は、QTAKE HD活用して、1つの4K映像から左右の映像を切り出して回転させ、S3Dに合成してプレビューしたそうだ。機材検討とワークフロー構築を行ってきた東映 テレビ・プロダクションの八木明広氏は次のように話した。 「今回の撮影では、20数年前に映画『JAWS 3D』がARRIVISIONを使用して35mmカメラ1台で撮られたということを聞いて、RED ONEの4KフルCMOSなら撮れるんじゃないかとテストしました。2台のカメラで撮ればわずかであっても色味の違いなどが生じますが、 ARRIVISIONを使って1台のカメラで撮れるのであればそれは生じませんし、カメラの取り回しもフットワーク良く行えると思ったんです。プレビューするのにQTAKE HDを使ってみたら、本撮影でも使えそうだという可能性を見出せました。ミラーリグを使用した時の視野の反転など、QTAKE HDは汎用性の高さを感じる製品ですね」 |