カメラ本体と接続して同時収録し、様々なカメラフォーマットをApple ProRes 422に統一するという革新的な機能を持つKi Proに、ユニークな使用例が登場した。それは、Ki Proをシネマ上映に使用するということである。第3回恵比寿映画祭(2011年2月18日〜2月27日)での作品上映でも、それが実践された。Ki Proのメリットを最大限に活かしながら、この活用法に着眼して成功をおさめたのは柴田剛映画監督と、HD撮影から上映までの技術をサポートするHDコーディネーターの田中誠一氏だ。両氏に、第3回恵比寿映画祭の会場で話を伺った。
柴田監督は、2005年ハワイ国際映画祭にてDream Digital Awardを受賞した『おそいひと』や、2009年の第10回東京フィルメックス・コンペティション部門や2010年ニューヨーク・アジア映画祭で上映さ れた『堀川中立売』、1999年に初監督として手掛けた16mmによる長編映画『NN-891102』からすでに5本の映画製作を行っている。第3回恵比 寿映画祭では、柴田監督の最新作『ギ・あいうえおス』(愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品)が上映された。 柴田監督の作品には、映像に対する斬新な切り口とともに、独特のリズム感がある。そして、柴田監督の代表作品といえる『堀川中立売』は、日本ではじめてKi Pro上映を成功させた例となる。| Ki Proの柔軟性に着目、上映機材へ 〜Ki Proを上映に使った経緯 「Ki Proは、リリースされた時から「映画の上映に使えるんじゃないか」と注目していました。シマフィルムは制作だけでなく、映画の配給を行っており、自社でも映画館を持っています。まずその映画館で、コストを抑えながら高品質なHD作品の上映システムを構築する必要があったんです。 Ki Proが出荷開始されてすぐに評価機を使った検証を行い、その結果、満足の行く画質、音質が得られ、導入に至ったというわけです。ちょうどその頃、『堀川中立売』はP2 HDカメラでの撮影がすでに始まっていましたが、フィルムではなくKi Proで上映することが決定したため、ポストプロダクションの工程はすべてProResに変換して行っています。」 「現在、デジタルシネマ(DCP規格)の製作・上映環境に対応するには、数千万から数億円規模の投資が必要となります。HDの上映環境を整えるのにも、莫大な機材投資が必要になります。さらに、カメラにはさまざまな種類がありそれぞれにフォーマットが混在するのと同様に、プロジェクターにもさまざまな種類があります。製作から上映まで、HD化に数多くの問題が存在する中、あらゆるイン/アウトに対応し、さらに低コスト化を実現してくれるのがKi Proだったんです。また、画質という観点においては、Apple ProRes 422が、映画にも十分耐えられるクオリティを持っていることをすでに確信していたので、ProResワークフローも抵抗なく導入できました。」(田中氏) クオリティの高さと安定稼働に安心感 〜Ki Proで実際に作品を上映してみて... 「Ki Proでの上映は自分にとってもはじめてで、前例のない方法だったので、不安はありました。実際に何ヶ所かで上映を行ってきましたが、今のところトラブルはないし、撮影、編集工程を経ての画質や音声の再現性、クオリティにも満足しています。少し気が楽になったかな。」(柴田氏) 「先にも触れていますが、Ki Pro上映を決める前に念入りな動作確認とクオリティチェックを行いました。その際、プロデューサーであり配給会社シマフィルム代表取締役の志摩敏樹氏も、Ki Pro上映のクオリティの高さを実感しています。また、志摩氏は実際に映画館を2箇所運営しており(舞鶴八千代館、福知山シネマ。両京都府)、運営者のデジタルシネマに関する投資の観点からも、Ki Proのコストパフォーマンス性に大満足でした。このような背景から、Ki ProによるHDソリューションを確立していったのです」(田中氏) |
4Kデジタルシネマプロジェクターまで、さまざまなプロジェクターに対応
〜Ki Proで実際に上映した映画館
「現在、東京では恵比寿映画祭が開催されており、シアターで上映される約4分の1の作品に採用されているわけですが、同時期に大阪でCO2映画上映展(2011年2月26日〜27日)が開催されています。そこでも、Ki Pro上映を行っています。 また、『堀川中立売』に関しては、11月より12週続けて、ポレポレ東中野や吉祥寺バウスシアター、シアターN渋谷などで、長期間にわたる上映を問題なく終えました。特に吉祥寺バウスシアターは、クリスティ・デジタル・システムズ社の4Kデジタルシネマプロジェクターが設置されており、HDプロジェクターでしか立証を得ていなかったKi Pro上映も、4Kデジタルシネマ用プロジェクターにおいてもまったく問題なく上映できることを確認できました。これにより、シネコンでのKi Pro上映の可能性もでてきたわけです。 この恵比寿映画祭が終了した後には、京都シネマ、シネマート心斎橋、神戸アートビレッジセンターなどと、関西方面で『堀川中立売』を上映していく予定です。供給会社のシマフィルムが所有しているコンパクトなKi Proを、それぞれの映画館に持ち込んでの上映となりますが、各映画館にはすでにプロジェクターが設置されており、それぞれ場所によってさまざまな種類のプロジェクターとなります。その際、コンポーネントにもHDMIにも、多種なアウトプットに対応しているKi Proの特徴が大きなメリットとして活かされます」(田中氏) Ki Proの応用利用により、アート性の広がりも
〜今後、Ki Proの利用計画
「通常、作品制作時の関係者間では、技術的な視点からのワークフロー提案と、イメージ的な視点からのワークフローの提案とは、合致するのが困難な場合があります。お互いにゆずれない部分をすりあわせしていく必要があるのですが、Ki Pro使用に関しては、両方の面からの合意が簡単にとれるワークフローになりました。また、SDのカメラでも、Ki ProだったらアップコンしながらHDベースでファイル収録が行え、さらなるポストプロ工程での時間短縮と画質の損失を軽減できるというメリットがあることも聞いています。Ki Proが搭載する多彩な機能は多くの可能性を秘めており、それを活用することにより、今後の製作の幅が広がっていくことに期待しています」(柴田氏) |